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発作の誘発因子

てんかん発作を上手にコントロールするには、医師による薬の選択も大切ですが、 患者さん自身の自己管理もきわめて重要です。
以下、項目別に述べてみましょう。

怠薬
怠薬とは、薬を飲み忘れることです。
抗てんかん薬の場合は、毎日規則的に服薬することにより薬の血中濃度が維持されています。
たとえて言えば、ストーブの火を絶やさないように、毎日マキを継ぎ足してくべているようなものです。
火が消えるとは、血中濃度が極端に低下することで、大変危険です。
単に発作が起きるだけでなく、突然の血中濃度の低下が てんかん重積を招き、記憶障害などの強い後遺症を残すことがあります。
まず怠薬をしない、これが薬物療法の第一歩と言えます。

睡眠不足
睡眠によって、脳は疲労から回復します。
脳には、「内因性抑止機構」と称する、発作を止める力が 本来備わっています。
しかし、脳が疲労すると、この抑止機構の働きが悪くなります。
つまり、発作が起きやすくなるわけです。
脳が疲労してくると、我慢する力が低下します。
イライラしたり、集中力が低下するなどの症状が出ます。
このような時は、脳が疲労しているので、発作も起こりやすいと 考えた方がよいでしょう。
睡眠時間は、朝おきた時に頭がすっきりしているのが、適切な長さです。 これは、個人差があるし、年齢と共に変化しますので、現在の自分の適切な睡眠時間に合わせて、リズムのある睡眠パターンを作るのが大切です。
長く寝過ぎると、帰って頭がぼんやりとして、逆効果になります。薬に次いで大切なのは、自分にあった睡眠のリズムです。

精神的ストレス
精神的ストレスは発作の重要な誘発因子の一つです。
会社に勤めていた女性が、仕事を辞めて家庭でのんびりするようになったら、 すっかり発作が起きなくなった、などと言うことは珍しくありません。
この例で分かるように、人間関係が一番大きなストレスになりがちです。
もちろん、残業や試験勉強が続いたりするのもストレスになります。
この場合は、睡眠不足も重なりやすいので、特に発作が起きやすくなります。
一般的に言って、ストレスの最中に発作を起こす人は比較的少なく、ストレスが過ぎて やれやれと一息ついた時に発作を起こしやすいようです。
1日の生活で見てみると、会社の仕事が終わり、ほっと一息ついた帰りの電車の中で 発作が起きて、気がついたら随分先まで乗り越していた、などというお話をよく聞きます。
睡眠の規則的リズムと同様に、勉強や仕事もため込まないで、毎日八分目くらいのペースで 軽度の疲労感に留めることが大切です。

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文責 清水弘之 (日本てんかん学会専門医・指導医)




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