最近話題になっているてんかんが原因の交通事故ですが,殆どの場合が側頭葉てんかんが原因になっています.
側頭葉てんかんは,本人が自覚のないままに無意識に行動する自動症が特徴です.
しかも,発作の前兆がない場合,患者さん本人に発作が合った自覚が持てません.
このことが,自分の発作を過小評価して,気軽に運転することにつながっているのです.
側頭葉てんかんは高齢者のてんかんの大部分を占めており,てんかんの中で最も看過できない発作型と言えます
しかも,側頭葉てんかんは、成人の代表的な難治てんかんのひとつです。
難治てんかんとは、薬物療法で発作が止まらないてんかんを意味します。
側頭葉てんかんの原因としては、仮死分娩、脳炎・髄膜炎の後遺症、はしか、突発性発疹、先天性脳腫瘍、大脳皮質の形成障害、脳血管障害、頭部外傷など、非常に多岐にわたっています。
てんかんというと遺伝を考える人がいますが、側頭葉てんかんで遺伝性のものは皆無に近いといえます。
側頭葉てんかんは、特異な発作症状以外に、記憶障害、性格変化、精神症状など、他のてんかん発作に見られない様々な随伴症状があります。
また、薬が効きにくい代わりに、外科的治療にきわめてよく反応するという利点もあります。
以下の項目ににわけて、側頭葉てんかんを解説しました。
現在この病気を持っている患者さんが、1人でも多くこの最も危険な発作から解放されることをお祈りします。
目次
側頭葉てんかんの発作症状は、複雑部分発作とよばれます。
この名前のとおり、非常に特異な発作症状で、なれていない人にはてんかんとは思えないかも知れません。
実際、患者さんの中には、医者から“ヒステリー”とか、“ノイローゼ”などの、誤った診断を受けた方もおられます。
最も一般的なタイプは、まず上腹部の不快感などの前兆があります。
前兆には、フラーっと倒れそうな感じがするめまい感、高音性の耳鳴りなどもあります。
また眼前の景色が懐かしくかんじられるデジャビュや、頭の中で同じような景色や音、声などが浮かぶこともあります。
この前兆だけで終わっって、発作に発展しないこともあります。
また、発作に発展しても、前兆までしか記憶していないのが通例です。
前兆から発作に移行する場合は、虚空を凝視し、体が硬直、顔がチアノーゼで青くなる場合が多く見られます。
口をペチャペチャさせたり、舌をツパッツパッと鳴らしたりする自動症が見られます。
「はい、はい」などの、その場と関係のない言葉を反復することもあります。
中には、歩き出したりする徘徊自動症というのもあります。
発作の持続時間は,大体1-2分です。
その後、5-6分くらいもうろうとした状態が続いて、回復します。
患者さんは、発作の前兆ともうろう状態の部分は記憶していますが、発作中のことは全く覚えていません。
名前を呼ぶと、返事をすることがあるので、周囲の人は意識があるように錯覚しますが、本人は記憶していません。
さらに、発作の間は、熱い、冷たい、痛いなどの感覚がありません。
このため、発作中に熱湯が体にかかっても、発作が終わるまでは気づきません。
家庭の主婦が、家事の最中に発作を起こして、大やけどをすることもあります。
最も怖いのは、入浴中に発作が起きて、風呂の湯を発作中飲み続けて、溺死などの悲劇につながることです。
このように、余り目立たない発作ですが、全身けいれんなどよりも、はるかに生命に対する危険性が高いといえます。
さらに、やっかいなことは、発作の前兆がない患者さんも少なくありません。
前兆がないと、発作があったことすら自覚できず、危険性の高い発作にもかかわらず
患者さんの病気に対する自覚が低いこともこの病気の治療が困難な原因の一つとなります。
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側頭葉てんかんの焦点の首座は海馬にあります。
海馬は記憶の出し入れに関係した器官です。
記憶には、はるか過去の記憶と、最近の記憶と、直前の出来事の記憶の3種類があります。
これらは、遠隔記憶、短期記憶、瞬時記憶などとよばれています。
側頭葉てんかんで最も障害されやすいのは、短期記憶です。
2-3日前のことや、数時間前の出来事が忘れやすい傾向がみられます。
このような記憶を留める大脳の機能を記銘力と呼びます。
てんかん焦点が右にあるか左あるかによっても、記銘力障害のパターンが異なってきます。
左側の脳は、通常言語機能を営んでいるので、言語の優位半球と呼ばれることはご存じと思います。
このために、左の海馬の障害では、言語性記銘力の低下が生じます。
人の名前を忘れたり、言葉に関連する記憶が障害されやすくなります。
少しややこしい話が理解できなくなったり,抽象的な話をされるとついて行けません.
また,自分で話す場合でも,適切な言葉が浮かんでこないので苦労することがあります.
これに対して、右側の海馬に焦点がある場合は、人の名前などは比較的記憶していますが、
出来事、地理、人の顔などの記憶障害が目立ってきます。
左側の場合は、言語性記銘力以外にも、右と同様な視覚性記銘力も同時に低下します。
つまり、焦点が左側に存在する方が、記憶障害の程度が強いと考えてもよいでしょう。
両側に焦点が存在する場合も、左側の焦点と同様に、言語性、視覚性の両方の記銘力が
低下し、その程度はさらに強い傾向が認められます。
しかし、側頭葉てんかんの全例で記憶の障害が生じるわけではありません。
てんかん発作の原因が仮死分娩などの乳幼児期の出来事に関連していると、片側の海馬の
機能が完全に脱落していても、反対側が代償していて、記憶障害が全くない方もいます。
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側頭葉てんかんが他のてんかんと異なっている点は、発作以外にいろんな随伴症状を伴うことです。
記憶障害もその一つですが、それ以外に、性格変化、精神症状などを伴うこともあります。
海馬は、辺縁系と呼ばれる脳の古い部分に属しています。
つまり、人間でも動物でも共通に発達している部分で、人間の進化の過程で発達した大脳新皮質とは異なります。
ネズミの海馬などは、脳の断面を作ると、その大部分が海馬で占められています。
この古い脳である海馬は、“怒り”“不安”などの原始的感情とも密接に関係しています。
てんかん発作は、一種の電気現象であるから、たとえて言えば、発作前の状態は海馬が充電した興奮状態にあるとも言えるでしょう。
この状態になると、いらいらが強くなったり、攻撃的になったりしがちです。
同じことを言われても、普段なら聞き流しておくようことでも、激しく反抗してきます。
些細な原因で、ひどく怒り出したり、時には、暴力を使ったりすることもあります。
怒りの対象は、最も多いのが母親です。
さらにエスカレートすると、対人関係もうまく保てなくなってきます。
しかし、てんかん発作が起きて海馬に貯まった電気が放電されると、本来の穏やかな性格に戻ります。
側頭葉てんかんを持つ患者さんの性格変化は、このように良いときと悪いときと、むらがあることです。
いつも機嫌が悪いのは、てんかんのせいではなく、もともとの性格と言うことになります。
また、側頭葉てんかんでも、このような性格変化が全く見られず、きわめて穏やかな性格の人もいらっしゃるので、とても不思議です。
側頭葉てんかんをもった人は、“幻覚、妄想”“うつ状態”などの、精神症状を伴う割合が比較的高いことが知られています。
妄想では、特に被害妄想が多いように思えます。
隣の人が自分の悪口を言っている、などのような妄想が突然出現してきます。
このような精神症状は、てんかん発作を患っている期間が長いほど起こりやすいと言われています。
性格変化は発作そのものに関連しているので、手術でてんかん発作が消失すると、
性格変化も劇的に改善されます。
それに反して、精神症状は、側頭葉の直接の症状ではないようで、てんかん発作が消失ても余り改善されません。
中には、手術後に発作が完全に消失しているにもかかわらず、新たに精神症状が出現することもあります。
つまり、手術の有無にかかわらず、一定の割合で、精神症状が出現すると考えたほうがよいでしょう。
精神症状は、抗精神病薬で改善されますが、患者さん自身が自分の精神症状を病的だと認めないために、
薬物治療が困難なことも少なくありません。
側頭葉てんかんに使われる最も代表的な薬はテグレトール(カルバマゼピン)である。
まず、単剤療法でテグレトールを耐えられる最大限までに増量する。
単剤療法で発作がコントロールされれば、それが最も望ましい形です。
テグレトールの血中濃度が上昇すると、中毒作用として、眠気、ふらつき、目の焦点が合いにくいなどの症状が出現してきます。
また、体質的に合わない場合は、過敏症状として、発疹、発熱、リンパ球の腫脹などがみられます
このような過敏症状が出現したら、直ちに服薬を中止しないと、症状が重篤化して非常に危険です。
特に、薬疹などの過敏症状を放置して、服薬を継続すると、SJS(Stevensen-Johnson Syndrome)と呼ばれる
生命の危険を伴うような症状にまで発展します。「薬疹かなと思われる症状」が出たら、直ちに服薬を中止する。
これが、常に原則であることを頭にしっかり入れておいてください。
テグレトールはグレープフルーツのジュースと一緒に服用すると血中濃度が高まるので注意しましょう。
2015年代に入って、ラミクタール(ラモトリジン),イーケプラ(レベチラセタム)などが単剤利用可能になったので
側頭葉てんかんに関する第一選択薬の範囲が広がってきました。
テグレトールと比較して薬疹などが生じにくく多剤との相互作用がほとんどないイーケプラを
第一選択薬に選ぶ医師も増えてきました。
イーケプラは比較的副作用の少ない薬ですが、非常に怒りっぽくなるなどの精神症状が出現することがありますので
このことを常に念頭に置いて使用するとともに、患者さんにも注意を促しておく必要があります。
また、ラミクタールは薬疹の発現頻度が高いという問題点はありますが、妊娠の可能性のある女性の場合、
胎児の催奇形性が低いなどの理由で、若い女性の第一選択薬として選ばれる場合が多い傾向にあります。
しかし、最近のエビデンスの蓄積では、ラミクタールとイーケプラの催奇形性にはほとんど差がなく、
両者ともかなり低い催奇形性の割合が報告されており、抗てんかん薬を服用していない人との危険性の差は
ほとんどないように見えます。
ラミクタールとイーケプラはともに側頭葉てんかんに有効ですが、ラミクタールの方がやや全般発作に対する
有効性が高く、イーケプラのほうはやや部分発作寄りの有効性を示す印象があります。
しかし、これはわずかの差で、むしろ患者さんの個体差により有効性が異なる場合の峰が多い印象があります。
それ以外に、第一選択薬としてアレビアチン(フェニトイン)、エクセグラン(ゾニサミド)などが候補となります。
アレビアチンは、薬の服用量と血中濃度が比例して上昇せず、ある点を過ぎると急激に血中濃度が上昇するので、
服用量の調整がむずかしい薬です。
また、歯肉の増殖、毛深くなる、などの副作用があるので、若い女性には慎重に投与する必要があります
エクセグランは、単剤で思い切って血中濃度を上げると著効を呈することがあります。
通常は30μg/ml以下の血中濃度で治療されますが、35-40μg/mlまで上昇させると、複雑部分発作が著明に減少することがあります
もちろん、これだけの濃度に患者さんが耐えられない場合もありますので、中毒症状の出現に注意しつつ、少しずつ増量していきます。
エクセグランの副作用として、発汗減少を来すことがあるので、暑い時期は熱中症に注意する必要があります。
そのほか、精神症状、食欲低下などもよく知られた副作用です。
しかし、胎児に対する催奇形性はこれまでの報告では、エクセグランはきわめて低い結果が報告されているのは
非常に注目に値することかもしれません。
デパケン、セレニカなどのバルプロ酸は小児の側頭葉てんかんでは第一選択ですが、思春期を過ぎて成人になると
効果が乏しい例が少なくありません。
小児期に有効であったバルプロ酸が成人気になって効果がなくなることは非常に重要なことですので、
子供の頃からバルプロ酸を服用していて、成人になって複雑部分発作が再燃した場合は,
バルプロ酸の効果に
変化が生じた可能性を考慮する必要もあります。
抗てんかん薬を多剤服用しても発作がコントロールされない患者さんは、外科的治療で、この苦境から
脱出できたら、どんなに素晴らしいことだろうと、想像されることかと思います。
しかし、外科的治療で非常に改善する患者さんと、手術が全く効果が乏しい患者さんといます。
私の約500例の側頭葉てんかんの手術経験からいえることは、手術前の脳波が鍵を握っています。
てんかん専門医による脳波診断で、異常波が片側の側頭葉からだけ発生している場合は、
外科的治療により好結果が期待できます。
頭皮脳波で両側に異常波が出現する場合は、たとえ頭蓋内電極を留置して、片側の優位性が証明されても
あまり良好な手術結果は期待できないことが多いようです。
このような例では、迷走神経刺激術などの緩和的治療をまず試みられるのがよいと思います。
以上のことを念頭に置かれた上で、以下の外科的治療の内容をお読みください。
側頭葉てんかんの外科的治療は1950年代に完成されました。
50年以上の歴史的検証を経て、その有効性は広く認められています。
最も古典的な手術は、前側頭葉切除術と称して、側頭葉の先端から約5cmまでを、海馬などの内側構造を含めて、一塊として切除します。
実際には、言語の優位半球では、4.5cm 程度に短めに切断しますが、非優位半球の右側では7cm位まで切除することがあります。
近年手術用顕微鏡の普及に伴って、海馬などの内側構造を選択的に切除して、なるべく外側皮質を温存する方法が普及してきました。
その代表的なものが、"前内側側頭葉切除術"と"選択的扁桃体海馬切除術"です。
この術式は、側頭葉の先端に2-3cmの比較的小さな窓を作り、ここから側頭葉内側の海馬に到達します。
従来の側頭葉切除術と比較して、外側の大脳組織を切除する範囲が狭いので、術後の言語障害などの後遺症が出現しにくいという利点があります。
また、視野が広いので、手術操作もやりやすく、現在多くの施設でこの手術法が採用されています。
前頭葉と側頭葉の間の溝をシルビウス裂と呼びます。
この溝の間を分けていって、髄液の充満した側頭葉の下角(脳室)の天井を開けます。
海馬は下角の床を構成している真っ白な組織です。
扁桃体は海馬の前方に、下角の天井からぶら下がるように存在します。
下角の天井の穴から、この扁桃体と海馬を切除する方法です。
外側の脳の組織は殆ど切除されないので、きわめて選択的な海馬の切除法です。
側頭葉の外側皮質を切除しないので、術後の言語機能の障害を避けることができます。
しかし、海馬を切除することには代わりはないので、左側の海馬の萎縮が少ない場合は、
他の手術法と同様に、
手術後の記憶障害を避けることはできません。
側頭葉てんかんの手術成績はきわめて良好です。
手術前の検査で、発作症状、脳波、MRIの画像診断などがすべて一致して、片側の側頭葉のみがてんかん発作に関係してる場合は、
手術成績はきわめて良好となります。
約80%の患者さんで、発作の消失が期待できます。
特に、MRIで海馬硬化症の所見があり、蝶形骨誘導による脳波で同じ側から強いてんかん波が見られるようなケースが、
最もよい手術結果が期待できます。
脳波で両側の側頭葉から異常波が見られる場合は、片方がきわめて優勢であれば、そちらの側の手術により、
かなり発作を改善させることができます。
場合によっては、比較的少量の服薬で完全に発作が消失することも期待できます。
このようにてんかん焦点の分布により、手術成績はかなり異なってきますが、全体を平均すると約70%の発作消失率が
世界のてんかんセンターの平均的数値です。
手術して発作が残存する場合は、反対側の側頭葉に焦点が残っている場合、手術した側の焦点が広く、
手術範囲よりさらに後方に焦点が広がっている場合、などが最も頻度の高い原因です。
後方に焦点が残存している場合は、追加手術により発作が消失することもあります。
側頭葉てんかんの手術は、てんかん外科に習熟した脳外科医が行えば比較的安全な手術です。
しかし、海馬を切除する限りどうしても避けられない後遺症があります。
それが記憶の障害です。
左の側頭葉切除で出現しやすい症状です。
記憶障害が術後に生じやすい場合としては、
これらの項目の中で、海馬の萎縮が存在しないことが、最も重要な原因となります。
最近のMRIは非常に感度が高くなりましたので、わずかな海馬の萎縮や、海馬硬化症などを発見できます。
しかし、このような微細な変化しか起こしていない左の海馬を切除すると、高頻度に記憶の障害につながります。
特に、左側は言語の優位半球ですので、左の側頭葉切除では、言語性記銘力障害と呼ばれる記憶障害が出現します。
記銘力とは、記憶を刻印する力で、これが障害されると、人の名前や、話の内容などをすぐに忘れてしまいます。
厳密に言うと、忘れるというよりも、記憶として残されていないと表現する方が正しいかも知れません。
単なる物忘れだけでなく、仕事の手順を言葉で説明されても理解しづらい、抽象的な話の意味を捉えにくいなどの障害も出現します。
このことからも、言語性記銘力は日常生活や仕事を円滑に行う上できわめて重要な機能であることがご理解いただけると思います。
左の側頭葉手術で、左海馬の記憶機能を温存させることは、長い間のわれわれてんかん外科医の夢でした。
1989年にモレル博士がMSTと呼ばれる画期的な手術法を報告しました。
これは、運動野や言語野などの切除不可能な部位にてんかん焦点がある場合に、これらの機能を損なうことなく、
てんかん焦点のみを抑制する方法です。
このMSTを海馬に応用できないか、長い間工夫を重ねてきました。
海馬は、側頭葉内側の深部に存在するので、記憶線維を障害しなしように到達する方法を発見するのに苦労しました。
また、MSTは非常に細かい操作ですので、ある程度広い視野を確保する必要もあります。
2001年に、側頭葉外側の上端(上側頭回)で、言語野を含まない先端から4cm以内に小さな切開窓を形成し、
ここからシルビウス裂に沿って灰白質を吸引して、側頭葉の脳室天井を開放し海馬に到達する方法が確立しました。
皮質切開窓をきわめて小さくすることにより、表面の主要な血管を損傷することが避けられます。
一端下角が開放されますと、広い脳室の空間が開放されますので、入り口の皮質切開窓が小さくても、
手術用顕微鏡でのぞき込むと海馬に対して、細かな操作を加えることが可能です。
海馬の神経線維の方向に沿って、5mm間隔で2mmの深さの線条を海馬の表面に沿って加えていくと、見事にてんかん波が消失します。
通常のMSTでは、4mmの深さで切り込みを入れますが、海馬の場合は、てんかん発作に関連している錐体細胞層が
表面から2mm以内に存在するので、線条をこれ以上深くする必要はありません。
また、海馬を走る記憶線維は海馬の長軸にほぼ直行して走り、内側の海馬采と呼ばれる神経束に収束していきます。
従って、この線維に平行になるようにMSTを加えていけば、記憶線維が保たれることになります。
下の図に示すように、海馬多切術では海馬は丸ごと温存されるのに比較して、側頭葉切除術では、どのように選択的に
外側の大脳皮質を残しても、海馬そのものは切除されてしまいます。
そのために、海馬と密接する記憶機能が障害されるわけです。
現在までに、70例以上の側頭葉てんかんをもった患者に海馬多切術を施行しました。
その結果は、1年以上経過をフオローした50症例で、術前の脳波が片側のみ、あるいは片側優位の両方例を含めても、
86%で発作消失またはきわめて著明な改善が得られています。
この結果は、従来の側頭葉切除術に十分比肩できる成績と言えます。
しかも、言語性記銘力は、手術後版年後の検査では、ほぼ全例で手術前のレベルにまで回復していました。
海馬に萎縮のない左側頭葉てんかんに対しても、外科的治療が可能な時代が到来したと言えます。
この手術法の詳細な解説は → こちらのサイトにもあります
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