若年ミオクロニーてんかん
発作型と病態
ミオクロニー発作は、手や足を左右対象に不規則に、電気ショックのようにふるわせる発作です。
この中で、特に「若年ミオクロニーてんかん」の頻度が高く、よく知られています。
若年ミオクロニーてんかんは、欠神や全身けいれんなどの特発性全般てんかんの仲間です。
また、この発作型そのものが欠神や全身強直間代けいれんを併せ持つこともあります。
若年ミオクロニーてんかんは、8〜30歳の間に発症しますが、特に思春期の発症頻度が高いのが知られています。
発作は、上肢を突然ふるわせることが多く、持っている物を落とすことがあります。
また、下肢のミオクロニーの場合は、突然転倒することがあり、転倒発作(失立発作)との鑑別が重要になります。
ミオクロニーは起床時に起きることが多く、通常のてんかん発作と同様に、睡眠不足、疲労、ストレスなどが誘発因子になるほか、アルコール、光刺激などが発作を誘発することが特徴的です。
若年ミオクロニーてんかんは一般的には、精神運動発達遅滞や神経学的異常を伴うことはありません。
しかし、中には、前頭葉機能障害と関連がある、特徴的な人格障害やライフスタイルを伴う場合があることも報告されています。
薬剤に対する反応は良好で、大概の場合、薬物療法で発作をコントロールすることが出来ます。
しかし、自然治癒することはなく、生涯にわたる服薬が必要です。
薬物治療
若年ミオクロニーてんかんの治療にはバルプロ酸(デパケン、セレニカ)が最も有効です。
バルプロ酸により80%以上で、発作のコントロールが可能とされています。
若年ミオクロニーてんかんの薬物療法で重要なことは、部分発作の第一選択薬であるカルバマゼピン(テグレトール)で発作が悪化することです。
若年ミオクロニーてんかんはしばしば欠神を伴い、側頭葉起始の複雑部分発作と誤診すると、治療薬の主体がカルバマゼピンやフェニトインなどになる可能性が高く、服薬により発作症状が悪化することがあるので要注意です。
若年ミオクロニーてんかんは全身強直間代けいれんを伴うことがあり、フェニトイン(アレビアチン)、フェノバルビタール(フェノバール)などが投与されることがありますが、これらの薬剤も若年ミオクロニーてんかんには無効です。
一方、第二世代の抗てんかん薬であるトピナ(トピラマート)、ラモトリジン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)などは若年ミオクロニーてんかんの治療に有効なことが報告されています。
同じ第二世代の抗てんかん薬であるカバペン(ガバペンチン)は、部分発作に対してのみ有効であり、若年ミオクロニーてんかんには効果が期待できません。
以上まとめると、若年ミオクロニーてんかんに対しては、バルプロ酸が第一選択薬であり、これに対して補助的に、クロナゼパム、さらには第二世代のトピラマート、ラモトリジン、レベチラセタムなどを追加することになります。
→ 「発作症状」に戻る
→ 「てんかんについての疑問すべてにお答えします」に戻る
文責 清水弘之 (日本てんかん学会専門医・指導医)
> 清水クリニックのホームページに戻る