全身けいれん

 全身けいれんには手足を強く突っ張る強直性と呼ばれるタイプと、手足をガタガタと震わせる間代性とがあります。
一般に、強直性の方が強いてんかん波が関与しています。
全身けいれんのみでてんかん焦点を推定するのは困難です。
大脳半球の広い範囲がてんかん発作に巻き込まれれば、全身けいれんに移行する可能性があるからです。
部分発作から全身けいれんに移行する場合は、二次性全般発作と呼びます。
これに反して、いきなり全身けいれんが発生する場合は一次性全般発作と呼びます。


 昔は、この二つを厳密に区別して、一次性全般発作は脳の表面からではなく、脳幹などの脳の深部から発生すると考えられていました。
しかし、最近になって脳梁離断術が広く行われるようになり、一次性全般発作と考えられるてんかん発作も脳梁を離断すると改善することから、すべての全般発作は大脳皮質が関与しているのではないかと推測され始めています。
全身けいれんのみでは、脳の発生場所を推測するのは困難であるといいましたが、頻度的には前頭葉が関与することが最も多いようです。
特に、睡眠が関連する夜間就寝中の発作や、明け方や起床直後に見られる全身けいれんは前頭葉焦点が強く疑われます。
運動野も比較的全身けいれんに移行しやすいことで知られています。
運動性単純部分発作を持った患者さんが、体調の悪いときは全身けいれんに発展することは、日常よく観察するところです。



薬物療法

 成人の全身けいれんは、多くの場合、薬剤でコントロールが可能です。
いきなり全身けいれんが起きる場合は、通常バルプロ酸ナトリウム(商品としては、デパケン、デパケンR、バレリン、ハイセレニン、セレニカRなど)が第一選択薬として使用されます。
バルプロ酸は血中濃度を測定して、適正な範囲に血中濃度を維持する必用があります。
一般に、有効濃度は50-100μg/ml ですが、この範囲に入っていればよいというものではありません。
血中濃度が60近くで発作が止まる人、80位まで持って行く必用がある人、中には100まで持って行かないとコントロールされない方もいます。
特に、この薬の場合は、服用している錠数は余り参考になりません。
極端な場合、4錠服用している方と、8錠服用している方の血中濃度が同じくらいのこともあります。

 全身けいれんが夜間のみにまれに起きて、翌日は、ふつうに通学や勤務ができる場合は余り神経質にならなくてよいでしょう。
しかし、発作の翌日は頭痛が強くて出勤できなかったり、長時間頭がぼうっとして体が使い物にならないような状態になるときは、さらなる発作のコントロールが必用です。
また、年に数回の発作でも、一回の発作がきわめて強い場合は、脳に後遺症を残す危険性もありますので、やはり十分に発作の抑制を図る必用があります。
バルプロ酸の血中濃度を十分に上げ、更に他の薬剤を併用しても発作がコントロールされないときは、外科的治療を検討すべきでしょう。

外科的治療

 全身けいれんが、部分発作から二次性に全般発作に発展する場合は、もとの部分発作の治療が先決になります。
しかし、いきなり始まる全身けいれん発作の中にも、脳波検査をすると前頭葉に異常波がみられる場合が少なくありません。
前頭葉てんかんの場合は、しばしば両側性に異常波がみられたり、これらの異常波が、左右共鳴するように同期して出現することもあります。


 左右同期性異常波を呈する前頭葉てんかんの場合、成人では、脳梁前方の部分離断で、かなり発作が軽減することも少なくありません。
また、発作が改善しない場合でも、脳梁離断後は左右の脳波が独立して出現するようになるので、焦点の診断が容易になります。
この結果に基づいて、焦点そのものに対する根治的治療を行えば、かなりの例で、発作の軽減や消失が期待できます。




(文責) 清水弘之 (日本てんかん学会専門医・指導医)

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