杉並区高円寺南の清水クリニックでは,パニック障害を重点課題として治療しています.
以下に,その要点を記します.
パニック障害とは、非常に精神的に辛い状態です。
あたかも、心のワナにかかったような状態で、もがけばもがくほど症状は強くなっていきます。
パニック障害にはいろんなタイプがあります。
急に不安感が襲ってきて、息苦しくなり、いてもたってもいられなくなる。
心臓の鼓動が急に激しくなり、死んでしまうのではないかと思われるような恐怖感にとらわれる。
電車に乗っていると、どうしようもない不安感にとらわれて、電車を乗り続けることができず、途中下車を繰り返す。
このような症状は、“一般の”人には馬鹿げてみえるので、「気にしない方がよい」「もう少し気持ちを大きくもったら」
などと忠告されます。
ところが、このような忠告がいよいよ症状を悪化させるのです。
人は容易に性格を変えることはできません。
また、「気にしない」ということほど、言うは易く行うのが困難なことはありません。
「気にするな」というなにげない忠告が、パニック障害に苦しむ人をいよいよ身動きとれなくしていくのです。
パニック障害は多くの場合、的確な治療が行われていません。
大概は精神安定剤が処方されるだけです。
眠くてふらふらするほどの精神安定剤を服用しても、なかなか症状は取れません。
ひどい場合は、“てんかん”と診断されて、抗てんかん薬が処方されることもあります。
抗てんかん薬を服用すると、一般的には症状はいよいよ悪化します。
てんかんとは基本的に異なる病気ですから、抗てんかん薬で頭がもうろうとするとかえってパニック障害は
起きやすくなるのです。
適切な治療が行われないと、パニック障害は何年でも持続し、年ごとに症状はひどくなります。
この間の患者さんの苦しみは筆舌に尽くしがたいものがあります。
誰も患者さんの本当の苦しみを理解してくれず、単に気の病くらいに思われてしまいます。
患者さんは、誰にも理解してもらえないこんな苦しみを耐えるよりは、骨折するとか、半身麻痺になるとか、
誰もが同情してくれる“はっきり目に見える”かたちの病気になる方がよほど楽だと考えるようになるほどです。
パニック障害を治療するには、治療する側の医師が病態を正しく把握していなければなりません。
治療の基本は三つからなります。
1. 正しい気持ちの持ち方(mind-set)
2. 自律神経の安定
3. 精神の安定
これらの治療内容を細かく説明するのは、やや専門的すぎるかも知れませんので、詳細は割愛します。
治療においては、この三つのいずれが欠けても、症状は良くなりません。
的確に治療が行われれば、数年間苦しんでいた症状でも、数ヶ月で雲散霧消することも可能です。
これまで、多くの患者さんが、この三つの要素を是正することで病気から解放されてきました。
パニック障害がなおることは、単に長年の苦しみから解放されるだけでなく、自分や人生に対する
正しい認識を得る良い機会となります。
パニック障害から治癒した患者さんは、自分がこの病気であったことに感謝の念すら抱くようになります。
このことからも分かるように、パニック障害は自分自身の性格と心のメカニズムに対する正しい洞察なしには、
完治が困難なのです