発作の誘発因子


てんかん発作を上手にコントロールするには,医師による薬の選択も大切ですが,
患者さん自身の自己管理もきわめて重要です.
以下,項目別に述べてみましょう.

◆ 怠薬
怠薬とは,薬を飲み忘れることです.
抗てんかん薬の場合は,毎日規則的に服薬することにより
薬の血中濃度が維持されています.
たとえて言えば,ストーブの火を絶やさないように,毎日
マキを継ぎ足してくべているようなものです.
火が消えるとは,血中濃度が極端に低下することで,大変危険です.
単に発作が起きるだけでなく,突然の血中濃度の低下が
てんかん重積を招き,記憶障害などの強い後遺症を残すことがあります.
まず怠薬をしない,これが薬物療法の第一歩と言えます.

◆ 睡眠不足
睡眠によって,脳は疲労から回復します.
脳には,「内因性抑止機構」と称する,発作を止める力が
本来備わっています.
しかし,脳が疲労すると,この抑止機構の働きが悪くなります.
つまり,発作が起きやすくなるわけです.
脳が疲労してくると,我慢する力が低下します.
イライラしたり,集中力が低下するなどの症状が出ます.
このような時は,脳が疲労しているので,発作も起こりやすい
考えた方がよいでしょう.
睡眠時間は,朝おきた時に頭がすっきりしているのが,適切な長さです
これは,個人差があるし,年齢と共に変化しますので,現在の自分の
適切な睡眠時間に合わせて,リズムのある睡眠パターンを作るのが大切です.
長く寝過ぎると,帰って頭がぼんやりとして,逆効果になります.
薬に次いで大切なのは,自分にあった睡眠のリズムです.

◆ 精神的ストレス
精神的ストレスは発作の重要な誘発因子の一つです。
会社に勤めていた女性が、仕事を辞めて家庭でのんびりするようになったら、
すっかり発作が起きなくなった、などと言うことは珍しくありません。
この例で分かるように、人間関係が一番大きなストレスになりがちです。
もちろん、残業や試験勉強が続いたりするのもストレスになります。
この場合は、睡眠不足も重なりやすいので、特に発作が起きやすくなります。
一般的に言って、ストレスの最中に発作を起こす人は比較的少なく、ストレスが過ぎて
やれやれと一息ついた時に発作を起こしやすいようです。
1日の生活で見てみると、会社の仕事が終わり、ほっと一息ついた帰りの電車の中で
発作が起きて、気がついたら随分先まで乗り越していた、などというお話をよく聞きます。
睡眠の規則的リズムと同様に、勉強や仕事もため込まないで、毎日八分目くらいのペース
軽度の疲労感に留めることが大切です。



( → 「てんかんの薬物治療」に戻る)