てんかんの手術(外科的治療)

てんかん学会専門医・指導医 清水弘之

 てんかんの手術(外科的治療)は、診断のための頭蓋内電極留置法と、治療のための各種の手術法に分けられます。
治療的手術法には、てんかん焦点や病巣を切り取ってしまう切除手術と、てんかん焦点からの連絡を遮断することによりてんかん発作を抑制する遮断手術とがあります。

  1. 迷走神経刺激術 (→ 文字をクリックすればその章にとびます)

  2. 大脳深部刺激術 (まだ,臨床的手段として,十分に確立されていません)

頭蓋内電極留置術

 てんかん焦点の診断には、発作症候、脳波、MRIなどの画像診断が三本柱となります。
これらの内科的検査で焦点診断がつかない場合、診断のための手術である頭蓋内電極留置の手術を行います。  
頭皮脳波と、頭蓋内電極から記録される脳波を比較してみると、全く別物といって良いほど、頭蓋内電極からは鮮明で大きな波が記録されます。  
頭蓋内電極による脳波記録の欠点は、電極が接触した部分のみしか診断できないことです。  
電極のすぐ隣からスパイク波が出ていても、電極には全く記録されません。
大体1cm 以上離れてしまうと、ほとんど異常波を探知することは不可能となります。  
従って、頭蓋内電極をどこに留置するかということが決定的な意味を持ってきます。頭蓋内電極を留置した場所が焦点からはずれていたら、どんなに長い期間、電極からの皮質脳波を記録しても正しい診断は得られないからです。  
 頭蓋内電極を留置するのは、内科的検査で診断がつかず、焦点の位置が不確かな場合がほとんどです。
しかし、焦点の位置が大体診断がついていないと、当てずっぽうで電極を入れても全く無意味である、という大きなジレンマがあるのです。  
また、焦点の位置が大体診断がついていれば、わざわざ頭蓋内電極を留置しなくても、焦点が予測される部位を大きく開頭し、手術中の脳表から直接記録する皮質脳波に基づいて手術をする方がより効率が良いことになります。
なぜなら、皮質脳波であれば、電極を自由に移動して希望とする範囲をいくらでも記録することが可能だからです。
また、手術操作を加えた後も、処置の不十分なところがないか再度皮質脳波を記録して、焦点の未処理を防ぐことができるからです。

 このように述べると、頭蓋内電極を留置する意味はほとんどないように思われるかもしれませんが、頭蓋内電極がどうしても必要な状況が存在するのです。
それは、成人の代表的な難治てんかんである側頭葉てんかんの場合、MRIで焦点の中心となる海馬に左右差がない場合です。  
海馬に萎縮がない場合は、たとえ脳波異常が片方に見られても、その所見のみに基づいて手術をすることはできません。
なぜならば、海馬は側頭葉の非常に深いところに存在するので、そこから発生する脳波は頭皮上からでは完全にキャッチできないからです。 
 側頭葉てんかん以外では、大体の焦点部位が診断つけば、術中の皮質脳波に基づいて手術を行う方が、広範囲を確実に処理することができます。
しかし、内科的検査で焦点の位置が全く予測がつかない場合は、頭蓋内電極をどこに留置するかを決定することもできないし、術中皮質脳波に基づく手術も、開頭範囲を定めることができないので実施不可能です。
 
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切除手術

  1. 病巣切除術

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  3. 皮質焦点切除術

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  5. 側頭葉切除術
 
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 →「記憶機能を温存する側頭葉手術法」を参照する


遮断手術

  1.  MST(軟膜下皮質多切術)

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  3.  脳梁離断術
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  5. 半球離断術
  6.  

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